乗っ取りや情報漏洩を防ぎ、広域で安全に飛行誘導
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は28日、株式会社プロドローン、株式会社サンエストレーディングと共同で、ドローンの飛行制御通信における安全性を強化する新技術を開発したと発表した。今後、多彩なジャンルでの活用が期待されるドローンの制御で、乗っ取りや情報漏洩の被害を防ぐ。
ドローンは、回転翼をもつ小型の無人航空機。空を飛ぶロボットとして、空撮や測量、インフラ点検などを中心に活用が広がってきている。一方で、飛行の安全性対策が大きな課題となっており、なかでもその遠隔制御に使用される無線通信が、傍受や干渉、妨害の影響を受けやすいことから、通信の乗っ取りなどのリスクが指摘されてきた。
NICTによると、現時点では、標準的な暗号化すら行われていないケースが多く、ドローンの制御通信における情報セキュリティ対策は、不十分なままになっているという。
また、ドローンを無線通信で制御できるエリアは、依然限界があるため、目視圏内で飛行させることが多く、今後の多方面における活用を考えると、ドローンと地上局間の制御通信における安全性と、データ通信の秘匿性を抜本的に高め、広域にわたる安全な飛行制御技術を確立しなければならない。
複数の地上局間での鍵配送を手渡しで行うセキュアな飛行誘導システムは2年後にも実用化
今回NICTらが開発した技術は、こうした課題に対応するもので、ドローンを制御する2.4GHzのシリアル通信における信号を、パケットごとに異なる真性乱数を用いて暗号化、制御の乗っ取りや情報漏洩を完全に防御する。
この「ワンタイムパッド暗号化」は、真性乱数と制御信号パケットの単なる足し算で行うものであるため、従来の暗号化で用いていたような複雑な関数や膨大な計算を必要としないため、処理遅延の心配がなく、セキュアな制御通信を処理が低速な小型かつ安価なデバイスでも利用できるようになるという。
さらに、現在市販されている無線装置でのドローン制御距離は、約1kmに制限されている。この運用範囲を拡大するには、地上局間での制御引継ぎが必要だ。今回開発された新システムでは、1度使った鍵は2度と使わないワンタイムパッド暗号化を用いているため、複数の真性乱数である“暗号鍵”をドローンに搭載し、その対になる“暗号鍵”をそれぞれの地上局に配送しなければならない。
この配送方法としては、人手による配送(第1世代)と、QKDネットワークによる自動配送(第2世代)の2つが考えられており、現時点で第1世代システムの実証実験と、「東京QKDネットワーク」で配送された暗号鍵を2つの地上局に供給し、飛行制御を引継ぐ第2世代システムの実証実験に成功したそうだ。
NICTではまず、通信を使わず、信頼できる宅配サービスなどを活かした人手による第1世代システムタイプの鍵配送を2年以内に商品化するとしている。また第2世代システムのタイプについても、NICT敷地内の東京量子鍵配送ネットワークにおいて、研究開発を継続していく方針だ。
このほか、従来の電波による方式だけでなく、レーザー光を使った大容量かつ安全なデータ通信ネットワークを実現するための研究開発にも積極的に取り組み、関連分野のイノベーションを推進していきたいとしている。
(画像はプレスリリースより)
国立研究開発法人情報通信研究機構/株式会社プロドローン/株式会社サンエストレーディング プレスリリース
http://www.nict.go.jp/press/2015/09/28-1.html