秘匿情報は守りながら企業間での生産設備融通を可能に！

株式会社日立製作所は16日、ドイツのフラウンホーファ研究機構製造技術・自動化研究所、ハンガリーのハンガリー科学アカデミー計算機自動化研究所とともに進めた共同研究で、数量や加工条件など個々の生産企業が有する重要秘匿情報は守りながら、別々の企業間で生産設備を融通可能とする新技術を開発したと発表した。

この成果は、日本の経済産業省とドイツの経済エネルギー省が、シェアリングエコノミーの実現を目指すことを目的として、製造業におけるIoTや技術高度化を目指すドイツの戦略的プロジェクト「Industrie4.0」での2国協力を推進する「日独IoT連携」共同プロジェクトのユースケースにも登録されている。

昨今の製造業においては、多様化する顧客ニーズに応じ、細やかなカスタマイズを施しながら、製品をタイムリーに生産することが求められる。これまではピーク需要に合わせ、製造を行う各企業が自前の投資で生産設備を確保することが一般的だったが、この方法では設備稼働率や総資産利益率が低く、小回りをきかせにくいため、こうした現代のスタイルに合う製品づくりが思うように行えない。

この問題解決は、工場の生産設備をインターネットで結び、自動管理することで生産性や効率性のアップを図る“第4次産業革命”においても重要課題と認識されており、各国がその解決を目指しているところだ。

日立製作所では、こうした動向を背景に、2014年9月からIEC（International Electrotechnical Commission）のMarket Strategy Board “Factory of the future”プロジェクトに参画、物やサービスなどの交換・共有で経済を成り立たせるシェアリングエコノミーのコンセプトを活かした生産システム「クラウドマニュファクチャリング」を提案していた。

「クラウドマニュファクチャリング」は、生産設備の利用権を必要な時間分、企業間で融通し合うことにより、過剰な設備投資を行うことなく、多様かつ移り変わりの激しい顧客ニーズへの対応と高い稼働率をもつ生産体制を両立させるシステムソリューションだ。この「クラウドマニュファクチャリング」は、2015年10月のIEC白書で「Crowdsourcing Platform」として採択されている。

今回は、この「クラウドマニュファクチャリング」の実現性を検証するため、日立製作所とフラウンホーファ研究機構製造技術・自動化研究所、ハンガリー科学アカデミー計算機自動化研究所の3者が共同で研究を実施、実用化において不可欠となるセキュアな接続技術を開発するにいたった。

この新技術では、まず、設備を貸す側と借りて使用するユーザー企業側とが、設備利用契約や生産計画に基づいて秘匿すべき重要情報を決定、ユーザー企業が企業秘密となる加工条件などの情報暗号化を行う。暗号化された情報は、その他の生産に必要な情報とともに、一時的に接続されたレンタル設備に送信され、製品生産を実行することになる。

利用・生産が終了すると、全情報は無効化される仕組みで、これにより重要情報は守りながら、まるで自社生産設備のように借り受けた設備をスムーズかつ自在に使いこなして、効率よく生産することができるようになる。

3者は、この技術をIoT対応の産業用コントローラである、株式会社日立産機システムのPACシステム「HXシリーズ」に搭載し、製造ラインを模したテストベッド環境で実際にテストを行っており、生産管理システムと生産設備の相互接続によるクラウドマニュファクチャリングが実現可能であることをすでに確認済みだという。

なおこれらの成果は、3月16日～17日にドイツ・ベルリンで開催される「Digitising Manufacturing in the G20」と、3月20日～24日にかけてドイツ・ハノーバーで開かれる国際情報通信技術見本市「CeBIT」において、ロボット革命イニシアティブ協議会から紹介される予定となっている。

日立製作所では、今後実用化に向け、日独連携のもとさらなる研究開発を進めていくとした。

（画像はIEC ホームページより）




株式会社日立製作所　ニュースリリース
http://www.hitachi.co.jp/New/2017/03/0316a.html

IEC　ホームページ
http://www.iec.ch/index.htm